第1章

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淳に連絡をして初見の車から降りた。 地下駐車場から乗り込んだエレベーターはぐんぐん上がって行く。 エレベーターが到着したのは最上階……。 この男のスペックはいかほどなのだろうか。 「どうぞ」 扉を開けると大理石の広い玄関。 「ここ、使って」 すんなりと案内された部屋を見て言葉を失う。 12畳程の部屋に大きなベッドと丸テーブルにはカッシーナの足の細い椅子が2脚。 壁にはテレビがあり、まるでホテルの様だった。 その奥に扉が見え、それがこの部屋に付いているお風呂とトイレだという。 マンションの一室に二つもお風呂がついてるなんて、初めてだ。 私は躊躇いながらその部屋に踏み入った。 「明日7時半に出ようと思ってる」 「わかった」 「飲み物はテレビの下の棚に冷蔵庫あるから。 抵抗なければ朝食はキッチンの冷蔵庫から好きに使って。 俺朝は食べないから」 「ありがとう」 「ん、じゃあ」 ネクタイに指をかけ、煩わしそうそれを緩める。 この部屋を後にしようとしている初見を呼び止めた。 「初見」 「ん?」 「ありがとう、本当」 「ん」 口角をきゅっと上げて初見が頷いた。
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