第1章

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「睡眠障害が考えられますね」 「……」 「最近は多いんですよ」 私の表情に気づいて産業医は柔らかい表情で言った。 仕事終わり初見が産業医を呼び面談をした。 私の後ろには初見が同席したため 質問には曖昧に応えることができなかった。 「あと、拒食症というほどではありませんが摂食障害の心配もあります」 深刻にならない程度に淡々と話を続ける。 「酷くなるようでしたら 通院することも必要でしょう」 クリニックを紹介された。 ただ眠れない、食べられないだけだと思っていたけれど病名を告げられ自分の状態がそこまで来ていたことを自覚する。 今日もまた、初見の車に乗っていた。 「……初見、家寄ってもらってもいい?」 「いいよ」 「服持ち込んでいい?」 「構わないよ」 初見は真っ直ぐ前を向いたままそう言った。 もっと批難されるかと思ってた。 人の傷口はぐりぐり抉ってくるのかと思ってた。 歯に衣着せぬ感じが嫌ではなかったし、裏表ないのがよくわかるから。 昔だったら私、ここまで世話をかけられなかった。 1人で潰れてた。 「ちょっと待ってて」 マンションのエントランスの前に車を止めた初見は軽く手を挙げ合図した。
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