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そんな従順で
親の期待にまっすぐ応えてきた愛瑠が
「海外で働きたい」
と、言いだした時はちょっとした騒動になった。
愛瑠の両親は娘が1人で海外で生活なんてと
酷く心配して直ぐに結婚の話を進めようとした。
「3年でいいから」
初めて自分の意見を主張した娘を最終的には
泣く泣く見送った。
愛瑠が出ることにうちの父親はあまりいい顔をしなかった事をよく覚えている。
彼女はイタリアで修復師の仕事をしている。
向こうに行ってからとても明るく活発になった。
水を得た魚の様に
目もキラキラしていった。
年に一度帰ってくる時は空港まで迎えにいく。
「理央」
大きなスーツケースを押しながら
ぱっとした笑顔で手を振る。
変わったな、って思う。
そして自然とハグをする。
人との距離を保ちたい自分としては
こんな事できる数少ない人の1人で
知り合った時期が早かったからか
一緒にいた時間が長いからか
家族のような感覚になっていた。
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