第1章

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黒くて長い髪がバッサリ切られた彼女を空港で見たとき 驚いた。 「……私、理央に話したいことがあるの」 愛瑠が見上げて言う。 車に荷物を乗せて助手席に乗り込んだ彼女の腕には、およそ似つかわしくない時計があった。 「それ、イタリアの?」 エンジンをかけながら問いかける。 「あ、これ? 知り合いに作ってもらったの」 よく見えるように腕を上げた愛瑠が微笑む。 「……へぇ」 知り合い、ね。 「私、もうちょっと向こうにいようかと思って」 カフェに立ち寄り隣に座る。 「……おじさん達は、なんて?」 「まぁ、納得はしてくれたみたい」 「そっか」 と、なると厄介なのはうちの父親だ。 「理央のパパに、言わないといけないよね?」 「うん……そうだね。 何も聞いていないから おじさん達から何も伝えられてないよ」 両手でカップを持った愛瑠は視線を伏せた。 「言ったらどうなるかな」 「……今すぐ婚姻届を書かされるかもね」 「……」 「愛瑠がそうしたいなら 待ってるよ」 「……」 愛瑠は窓の外のずっと遠くを見つめていた。 「向こうで結婚したっていいんだよ?」
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