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「やつがれが、鍛え直して差し上げましょうか。その槍」
火男の面を被った男が、祭事の注連縄がかけられた巨木の下で口を開く。片目を眇め、口を尖らせたひょっとこの顔は全くの道化だが、鍜治師が火を焚いている最中の顔だとも言われる。面の男の顔に巻かれた手拭いが妙に大きく斜めに歪んでいるのは、彼が本当に片目を失っているからかもしれない。鍜治師は作業工程中、火で溶けた鉄の輝きを片目で長時間見つめ続けるため、いずれ見えなくなる者が多い。或いは、鍜治神に供物として捧げたのか。だとすれば、名工の可能性は高い。
「鍜治師がどうしてこの村に?」
「いちゃいかんわけでもないでしょう」
だが需要がないのも事実だ。精練の必要のない石を切り出し、供給するだけの村である。件の鍜治の里から逃亡でもしてきたのだろうか。何か理由があるにせよ、男からは悲壮感も危機感も感じられない。
「預けて下さりゃあ、旦那よりは上手く仕上げますよ」
恐らくは面の下、さらに手拭いの下で笑ったのではないだろうか。顔が全く見えないというのに、馬鹿にしているのではない、愛嬌のある笑顔が想像できる。
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