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「神山さん、4月から企画部の方に異動になったからよろしく。向こうでも頑張ってね。」
上司から呼び出され、突然の辞令を告げられた。
営業の仕事にもやっと慣れてきたと思えるようになった矢先の辞令に、私の気分は一気に暗くなった。
部署の仲間にも恵まれ、最近は勝手も分かってきて、仕事が楽しいと思えるようになったのに。
営業部のフロアに戻り、隣の席の先輩に異動になることを伝えた。
「神山さん異動なの?まだ2年目でしょ。ずいぶん早いね。寂しくなるなぁ。」
一番お世話になった先輩の言葉に、私もなんだか寂しさが込み上げてくる。
周りからも、
「え?神山さん異動なの?これから仕事回すの大変だな」
なんて声も聞こえてきて、ちょっとうれしい半面、そんなことを言われたら離れるのがもっと寂しくなってしまって、涙がこぼれそうになるのをグッとこらえた。
たかが異動なのに、こんなに寂しくなるなんて、私はよっぽどこの部署が居心地がよかったみたいだ。
けれど、組織の命令だ。従うしかない。
企画部に行けば営業部とは全く違う仕事になってしまいう。戸惑いは大きいが、組織に属する以上、そういうことも柔軟に受け止めるしかないのだ。
4月1日、正式な辞令が手渡された。
今まで異動の準備は進めていたとはいえ、一気に実感が沸いてしまう。
「神山リエ殿、あなたを企画部付きとする…か…はぁ」
口の中で辞令書をつぶやいてみる。
いやいや、落ち込んでいる場合ではないんだ!
今日からは企画部の人間になるのだ。早く気持ちを切り替えて、仕事を覚えなければ、新しい部署に迷惑をかけてしまうかもしれない。
さぁ頑張ろう!慣れればきっと大丈夫!
自分にそう言い聞かせ、異動先の人達へのあいさつの準備をはじめた。
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