第1章

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それと、視界におさめなようにしていたそれを僕はそらす。手紙だった。 「また、謝罪の手紙が届いてます。どうしますか?」 「いらない捨てておいてくれ、そんな形だけの言葉と謝礼金なんてもらったってちっとも嬉しくない」 事故を起こした相手から毎日届く謝罪の手紙とお金、憎んでも憎みきれない相手の憤りが僕の中でフツフツと煮え立つ。もしも名前も知らない相手だったら、感情を爆発させて、怒鳴りつけ、力の限り殴りつけることもできただろう。 「ですけれど、不慮の事故だったんです。手紙だけでも」 「不慮の事故? 不慮の事故だって? 何を言ってるんだ。大量の酒を呑んでは車を運転することは危険だと誰もが理解していることじゃないか、なのに運転したんだ。謝罪やお金をもらったところで、どうにも」 先輩と後輩が僕を抱き寄せる。もういいです。もういいですから先輩と僕の背中をポンポンと撫でる。 「疲れてるんですよ。先輩、少し休みましょう。ね? 私も今日は帰れそうなので一緒にいてあげます」 後輩の優しさが怖かったけれど、手放すことができなかった。誰もが妻を見捨てた、不幸な彼女に優しい言葉を投げかけてもすぐに誰もいなくなった。 「八つ当たりなんて最低だな、僕は、」 「いいですよ。誰だってそうなります。今日は休みましょう。明日、また、頑張ればいいんですよ」 後輩の言葉に身を任せ、その日は浴びるように酒を呑み、そして後輩の女の子を抱いた。そこに愛はない、ただ、慟哭を納めるだけの行為に意味はなく。しかし、僕は後輩の身体を貪るように愛撫し抱擁した。後輩が拒否しなかったことをいいことに僕は感情のたけをぶつけた。 二日酔いで痛む頭、そして隣でスヤスヤと眠る後輩を見て、僕は激しい後悔に襲われた、なんてことをしてしまったんだ。僕には妻がいるのに、ほかの女を抱くなんてこんなの許されるわけがない。 なのに、スヤスヤと眠る後輩の寝顔は優しげで、悲しみしか見せない妻と比較してしまう、動けない彼女と、動ける後輩が重なり、二日酔いにもかかわらず僕はまた、求めた。 もうダメだ。頭が痛い。妻への愛と、優しい後輩と板挟みになる。毎日、届く謝罪の手紙。 もううんざりだった。すべてを投げ出してしまいたい。破り捨てた手紙の一文が目にとまる。 私の罪を償うには、貴方に殺してもらうししかありません。お金がダメだと言うのならこの命を捧げたい
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