第1章

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「……裕子、悪かった。俺が馬鹿だった」 「うん、知ってる」 「こんな俺を愛してくれるのはお前だけだ。許してくれ。勘弁してくれ……」 「押せないんだ? なら、私が押してあげよっか」 にやりと笑って、その顔に紫煙を吹き付ける。 昨日していれば大目玉な行為だって、今じゃやりたい放題だ。 「裕子、裕子、離婚だけは……」 「何? お馬さんで遊べなくなっちゃうのがそんなにイヤ?」 「愛してるんだ裕子……頼む……」 「仕方ないなあ」 離婚届を、彼の手に持たせたまま引き寄せる。 狙うべき捺印欄は、ちょうど彼の手首の上だ。 「男みせろよ」 ――直後。 ぎゃああっ、と突き上げるような咆哮が辺りを震わせた。
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