第1章

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二年前に離婚した田辺君は元気だろうか。 浮気されDVをでっち上げられ、本来なら取れるはずの慰謝料を二百万ばかり毟られた彼は、カップ酒をあおりながら電話を寄越した。 彼は妻がヒモまがいのホストと浮気したことを嘆いていたが、私に言わせれば、DVの加害者と見なされたことのほうがよっぽど嘆かわしい。 夫が帰宅後に家事をこなしているあいだ、怠惰な妻は嘘のDV日記をせっせと書き綴っていたのだ。 私が驚いたのは、そんな茶番を調停員が信じたことではなく、キャバ嬢との結婚生活が四年半も持ったということだ。 キャバ嬢というものは私の左手で輝くダイヤモンドリングと同じで、その美しさにこそ価値がある。 実用性を求めるなら、メリケンサックを選ぶべきだったのだ。 通話を終える際、田辺君は二つの教訓を語ってくれた。 『浮気するやつは繰り返す』と『結婚相手はバカなくらいが丁度いい』だ。 そのときは長電話に疲れて生返事を返しただけだったが、そんなことをつらつらと思い出している今では、この教訓が頭から離れない。
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