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一度だけ窓から基地を眺める。
伊藤さんは幕僚長にまで昇進した後、退官した。
昇さんも伊藤さんの跡を継いでから退官。
俺の昔を知る人は皆退官していた。
磐田さんは里美と結婚して、特殊部隊大隊長を務めていたが数年前に退官している。
他の小隊メンバーは一時的に各地に散ったが、結局特殊部隊で再集結して、退官まで務めた。
K国とは多少の意見の不一致はあるものの、平和に会議で収拾が着いているし良政でまとまっている。
俺は手元のコーヒーを飲み干して、ゴミ箱に空き缶を投げ入れると玄関を出る。
目の前には一糸乱れぬ整列をした隊員達が居た。
「飯田一将…陸上自衛隊 幕僚長に敬礼!」
新人隊員の不慣れな敬礼も交じっているが、大半が立派な敬礼だった。
俺は答礼をすると、全員が気を付けの姿勢になる。
「老兵は死なず…消え去るのみ!おらっ!老兵に構っとらんと、業務に戻れ!」
俺の叫びで大多数が散っていく中、将官が残っていた。
「飯田一将の教えは後進に必ず伝えます」
そう言って将官達は最後の敬礼をするのだった。
俺は答礼するとそのまま基地の門をくぐり、入門証を返却すると俺は佳津子の待つ家に帰った。
…完…
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