第2章

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「ああ、黒岩さん、後で僕も行きますから。  稲垣課長の記事を書くんでしょう? 課に配属されてから、課長にはすごくお世話になっています。ぜひ、お話に参加させてください。  おいしいケーキをお持ちしますよ」  拒否反応を示したかったが、ケーキという言葉に思わず口が固まってしまった。  どうせ食えないんだから持ってこられても苦になるだけだぞと思ったが、思っている間に藤丸は去っていった。  婦警が去り際に藤丸の耳元に囁いたのを、ラウムの地獄耳は聞き逃さなかった。  藤丸の背中をうっとりと見つめていた婦警を一睨みした。  視線に気づいた彼女は、身を縮めるようにうつむいて、もう老人の方を見ようとはしなかった。
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