第4章

4/12
前へ
/37ページ
次へ
「ハハハ、簡単なことさ。  稲垣刑事の得意分野でもある、プロファイリングというやつだよ。  環境や状況から心理を分析して、行動を予測するという捜査方法だ。  悪魔なんて単純な生き物だからねえ。君が何を考え、どんな行動をするかなんて、僕には手に取るように理解できたんだよ」  ふざけんな、なにがプロファイリングだ!  押し退けるように、ラウムは天使の横を通って、その場を離れた。  その際、一発天使の顔を殴ってやろうと腕を振り回したが、軽々と避けられてしまう。  黒岩と藤丸では、体を借りている人間に差があり過ぎた。  それがまた悔しい。  こんなことなら、黒人の大男でもだましておけば良かった。  背後で、天使のばかにしたような笑い声が聞こえる。 「どこへ行く気だい?   稲垣刑事を地獄へ堕とそうと思っても無理な話だよ。  僕らの関係は縦の関係にあるんだ。  たしかに悪魔は人間より上の存在だ。  でもね、天使はその悪魔のさらに上に位置するんだよ。  だから、君にはとうてい、僕の心理なんてよめやしないんだ」  ラウムは、あえて振り返ることはせずに、受付まで戻って、その前にある長椅子に憤然と腰を下ろした。  腹の中は煮えくり返っていた。  受付の婦警がちらと目を向けたので、手帳を開き、何か書き込むふりをする。  そうしながら、ラウムは心の中で誓う。  ならば、やってやるさ。  貴様の心をよみとってやる。  天使にできることが、悪魔にできないわけがないんだ。  貴様の仕事を、妨害してやる。  地獄を統べる悪魔一族の名にかけて、そいつを誓う。  そして、もちろん稲垣の魂も必ずや地獄へと堕とす。  ラウムは、手帳の空いたページに大きく、『天使の心理とは?』と、書き込んだ。  そうしてしばらく頭をひねっていると、平然とした面構えで藤丸が歩いてきた。  ラウムには目もくれず、例のさわやかな笑顔を婦警に投げかける。 「午後から暇でしょ? ちょっと出ない?」 「藤丸刑事こそいいんですか? 仕事、残っているんじゃありません?」 「大丈夫大丈夫。もうほとんど終わったようなもんだから。  映画見るほどの時間はないけど、ケーキでも食べに行こうよ」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加