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「ハハハ、簡単なことさ。
稲垣刑事の得意分野でもある、プロファイリングというやつだよ。
環境や状況から心理を分析して、行動を予測するという捜査方法だ。
悪魔なんて単純な生き物だからねえ。君が何を考え、どんな行動をするかなんて、僕には手に取るように理解できたんだよ」
ふざけんな、なにがプロファイリングだ!
押し退けるように、ラウムは天使の横を通って、その場を離れた。
その際、一発天使の顔を殴ってやろうと腕を振り回したが、軽々と避けられてしまう。
黒岩と藤丸では、体を借りている人間に差があり過ぎた。
それがまた悔しい。
こんなことなら、黒人の大男でもだましておけば良かった。
背後で、天使のばかにしたような笑い声が聞こえる。
「どこへ行く気だい?
稲垣刑事を地獄へ堕とそうと思っても無理な話だよ。
僕らの関係は縦の関係にあるんだ。
たしかに悪魔は人間より上の存在だ。
でもね、天使はその悪魔のさらに上に位置するんだよ。
だから、君にはとうてい、僕の心理なんてよめやしないんだ」
ラウムは、あえて振り返ることはせずに、受付まで戻って、その前にある長椅子に憤然と腰を下ろした。
腹の中は煮えくり返っていた。
受付の婦警がちらと目を向けたので、手帳を開き、何か書き込むふりをする。
そうしながら、ラウムは心の中で誓う。
ならば、やってやるさ。
貴様の心をよみとってやる。
天使にできることが、悪魔にできないわけがないんだ。
貴様の仕事を、妨害してやる。
地獄を統べる悪魔一族の名にかけて、そいつを誓う。
そして、もちろん稲垣の魂も必ずや地獄へと堕とす。
ラウムは、手帳の空いたページに大きく、『天使の心理とは?』と、書き込んだ。
そうしてしばらく頭をひねっていると、平然とした面構えで藤丸が歩いてきた。
ラウムには目もくれず、例のさわやかな笑顔を婦警に投げかける。
「午後から暇でしょ? ちょっと出ない?」
「藤丸刑事こそいいんですか? 仕事、残っているんじゃありません?」
「大丈夫大丈夫。もうほとんど終わったようなもんだから。
映画見るほどの時間はないけど、ケーキでも食べに行こうよ」
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