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薄茶のよれよれになったロングコート。
染みのついた縦縞のシャツに、ネクタイは悪趣味なグリーンで唐草模様にも似た中途半端な刺繍がほどこされている。
(しかし、なんでこんなセンスのかけらもねえ服しか持ってねえんだ?)
ラウムは、警察署玄関に映った自分の姿を見つめて、あらためて悪態をついた。
いくら服装に気を配らなくてもいい事件記者だからといって、これではあまりにだらしがなさすぎる。
一歩間違えば、乞食と勘違いされてしまいそうな風貌だ。
そうかといって、黒岩健作のクローゼットの中に、これ以上ましな服があったかといえば、そんなものは一着たりとも存在してはいなかった。
あとは穴が開いているか、黴びた臭いが染みついているかで、身にまとう以前の不良品ばかりであった。
(まあ、しかたがねえ。身なりはそれほど重要ではないさ)
そうは思いつつも、少しでも見栄えがするようにと、コートのしわを引っ張ってから、ラウムは警察署館内へと足を進めた。
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