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「……………」
しばしばの静寂の後、桔梗さんは口を開きました。
「……いえ、皆様の言いたいことは分かります……。でっ……ですが左の宮様をどうか責めないであげてください。きっと、内心では喜んでくださっている筈です。……あの方は自分の気持ちが上手く表現出来ないだけなのです」
彼女の必死さが滲み出ます。
そして私は思うのでした。
「お互いに上司の後始末って大変ですよね。頑張ってください」
「えっ?……はい! 私も桜ノ宮様のことは大好きなんです」
桔梗さんは褒められたのが嬉しいらしく無邪気な笑みを見せました。
なんていうか……さち薄そう?
――――――――――――――――
その後、連れ立っていた桜の一人から言伝がありました。
晴明さんは結界の作成に時間がかかるという事で私だけが先に戻るという旨。
Q どうやって帰るの?
A 飛び込め!
嗚呼、なんて大雑把。
猿が辻に戻ってみれば先ほどの黒い塗り潰しが宙を漂ってました。
不思議に思ってみると見慣れぬ御札が一つ。ペタリと。
「不動明王の札……。制圧済みって意味でしょうか?」
不動明王は冥界で悪魔を鎮める存在なので、怪異もその支配下に置いたという意味なのだろうか。
「しかし…………んー」
私は逡巡しました。だって考えても見てください、ドロッとした黒い液体の中に飛び込むのです。そんなヤツ、明らかに、並の思考力の持ち主ではない……っ!!
そこに桔梗さん、再び登場。
「神代様。何をなさっているんですかー?」
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