第1章

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昼と夜の交わる赤暗い時刻、つまりは夕方。しかし、民俗学的にいえばそれは逢魔ヶ刻であるという。 魔物の現れる時だと囁かれたその空は赤く確かにこの世との境目だといわれたならばそれもそうかと頷いてしまうかもしれない。 「……でも、空が赤いのって空気中の微粒子に光が反射する角度で決まるんですよー」 「あなや!?」 晴明は昔の人特有のオーバーリアクションでのけぞる。 博士の称号を持つ彼でも現代人との知識差も歴然であり、車一つとっても彼には新鮮に映るようだった。 「さあ、もうすぐだな」 のんびりとした雑談を交わしつつ私達は京都大学を連ねる近衛通を降りて行くと目的地にたどり着きました。 長く大きな壁がお出迎えです。 「御所ですか?てっきり行き当たりばったりの市内観光かと思いましたけど?」 「勿論目的地はあった」 晴明は壁をコツコツと叩いてみせる。 それを見て私は大きくため息をつきました。勿論マイナス方面な意味で。 「晴明さんは知らないと思いますけどね、御所って期間限定で開くんですよ?それにこの時間は大体のお寺や神社は締まってますよ。行きたいのなら私に道を聞けば良かったのに」 勿論私がこんなことを言うのにも理由があり、本来御所は市役所から北に直進すればついてしまうはずなのである。 ……そう……、はず (強調)だったのである。 だが彼は外を回ったり来た道を戻ったり――言い換えると、遠回りをし、時間と私のストレスを着々と増やし続けながら市内を練り歩き、今しがた着いたというわけである。
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