第1章

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「いまは逆方違えとでもいうべきかな」 「つまり?」 「わざと瘴気の集まる方向へ向かっていると言うか……」 そこで晴明はふと足を止めました。 「ほら来た、異世界の扉だ」 「えっ……うそ……」 最後に私が見たのはまるで、写真をいたずらに塗りつぶした様な不自然な黒。 刹那、息が詰まるような静寂が、暗闇が、なんの前触れもなくわたし達を襲ったのです。 ―――――――――――――――――――――― 猿が辻は京都で有名な『鬼門』の一つである。 鬼門とは読んで字のごとく鬼の住む場所。 御所ではこの鬼門を封じるために日吉大社から猿を派遣しているのだとか。 猿は干支の方角で鬼の方角の反対に位置するとかの理由である。 閑話休題、さて、その鬼だが、一体どこから現れるのだろうか。 まさか虚無から沸いて出てくるわけは無いだろう。 では、彼らはこの世ならざる世界から現れたというのか。 理由があるから結果がある。 結論として、鬼門は異世界を気まぐれに繋ぐ一つの手段であると考えられるのかもしれない。 ――――――――――――――――――――― 暗い闇の中、天と地が入れ替わるような感覚を感じたあと私は地面に投げ出されました。
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