第1章

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―――――――――――――― ――――――――――― 境界世界、御所前。 赤く、妖しく染まる世界の下で死を覚悟した精鋭達は迫り来る怪物を捌いていた。 怪物達はどれも人の白骨をいたずらに付け替えたかのような外見をしていた。 白骨死体たちは自らの仲間を求めるかのように兵達に襲いかかる。 怪物達は慟哭を糧に、新たな血を求め、道を開く。 「くが……っ、誰かっ、この状況を打開できないのが……っ!」 「叫ぶ暇があったら、姫をお守りする事のみを考えろっ!!」 戦場に吉野衆隊長、曙の怒号が響きわたる。 「……っ!!」 水上は無心に槍を振るう。 切り結ぶこと数十合、血の匂いと耳朶に響く叫び声と共に逡巡する。 これまで幾つの戦友の命が失われたのだろうかと、 自分がこれまで残ってきたのはただの気まぐれだ。今だってほぼジリ貧状態だ。 先ほど背後を預けていた衣笠たちも、無数に溢れ出す骨の化け物の狂牙に倒れた。 しかし、水上はここで死ぬわけにはいかないのだ。 脳裏に妻と幼子の面影が浮かぶ。 戦友が命を賭してまで開いた道だ。 咆哮と共に、砂利を掴み、空を駆け、鋒で白骨兵の脛を一閃した。 しかし白骨兵の上半身は水上の半身を地面に縫いつけた。 眼前に骸が転がる。 ――俺はここで死ぬのか 掻き分けるように、白骨の巨漢が無粋な斧を持って襲い掛かる。 水上に出来る抵抗はもはや神に祈ることだけだった。 ――誰でもいい、……を倒して仇をうってくれ 水上は全身の力が崩落していくのを感じた。 「勾陳っ!!」 眠りにも似た諦念から彼を覚ましたのは、戦場ににつかない少女の声だった。 刹那、彼が見たのは眼前に迫った白骨兵が金に輝く巨大な蛇に一掃されていく光景だった。
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