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死屍累々、私の脳裏にそんな言葉が過ぎりました。
猿が辻の門を抜けた先は、怒号、絶叫、血の匂いの漂う戦場だったのです。
兵士達は武器を握り、迫り来る怪物と対峙している最中でした。
見れば、今にも殺されそうになっている人も、
私は胃を込み上げる不快感を押さえ、晴明にさけびます。
「助けないんですかっ!!」
しかし、晴明は面白くなさそうに頭を振りました。
「俺は逆に問いたい、美咲は逃げないのか?普通の感覚ならこういう時逃げるだろ」
「でも……人が……っ!」
「確かに彼らは襲われているように見える。しかし、彼らからしたら俺達も敵に見られているかもしれないだろ?
今襲われている兵士達が味方だなんて保証は何処にあるんだ?」
「あなたがそんな薄情な人だなんて思いませんでしたっ!!私だけでも助けに行きます!」
背を向けて、傷ついた兵士を安全な場所に引き入れようとする私に晴明はあっけらかんと言いました。
「それじゃ助けられんと思うがな」
「簡単な治癒式ならお婆ちゃんに習っています。それに、私には太陽神アマテラスの加護があります」
「理由付けが緩い、俺も一応は仕える側の人間だからな。もっとマシな提案は無いのか」
私は歯噛みしました。
確かに他人の命に自分が命を差し出すだなんて馬鹿げているでしょう。勿論、明確な勝利の確信が無いと動かない判断も冷静さの賜物でしょう。
ですが、いくら冷静でも、目前の事態を見て眉一つ動かさないのも人としてどうなのだろう。
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