第1章

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例えば、いくら戦闘が制限されているPKOであっても目の前で犯罪行為が起こっていたなら迷わず武器を取る……いや、少しの善意があるなら、人としてそうしなければいけないと思う筈なのだ。 「だって、人として当たり前じゃないですか?良心は痛まないんですか?」 「ほう、美咲は自念よりも公的倫理観で動いているのか?相手が人でなくてもか?」 晴明はごった返す。 「私はっ、言葉遊びをしているのではありませんっ!!」 私は激高して気付きます。 もしかすると、この人は正義の為に行動するという理由付けが気に食わないんだろうか。 はたまた人が下手に出てくるのが嫌いなのか。 頼んでダメなら命令しようか? なので、私は理由付けを変えてみることにしました。 腕を組み、やたら高圧的に見下ろし、理論の破綻した命令を下しました。 「私は巫女です。だからお前の式神を貸せ」 すると晴明は塀にもたれ掛かったまま、傍らでとぐろを巻いていた勾陳に目を遣ると「行ってやれ」と一言呟きました。 「勾陳っ!!」 私が叫ぶと勾陳は「やっと出番か、待たせやがって」とでも言いたげに頭をもたげ、手頃な白骨兵達を粉砕しに掛かったのです。 それからの戦況は圧倒的でした。 流石は十二天将の一柱。尻尾を払うだけで数十の骸を薙ぎ払い、どういう仕組みか、勾陳の周りを巡る光輪が、白骨兵の弾く矢を消し飛ばしました。 一方的に敵を屠るその有り様はまさに捕食者。 怪物達が減り、周りを見る余裕ができてきた兵士達は見知らぬ顔である私達に何処はかと無く問いました。 「貴方達は……一体……」 そして、返答者は主に二つの回答を得るのです。 「助けに来ました。簡単な治癒なら出来ます。だから諦めないで」 「ああ、俺達は迷い込んだんだ。逃げるに逃げられないんで傍観させてもらってる」 悲観していた兵士達にも闘士の火が再び灯ります。 そして遂に、最後の白骨兵が倒された時、生き残った兵たちは各々の得物を天に掲げ勝どきの声を上げたのです。 「おお、まさにグランドフィナーレ」 私はそんな光景に身が震えました。 めでたし、めでたし。希望って素敵。
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