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「美咲は奴らの正体を知ってて同行するのか?」
紫宸殿に向かう途中、晴明は呟きました。
「何をしている人たちか分からないですけど、手当てをした人達はみんないい雰囲気でしたよ。純粋で」
それを聞いた晴明はあからさまに落胆した様な素振りを見せました。
「まず一つ、彼らは人間じゃない」
私はむすっとした表情で返します。
「……誘導尋問のつもりですか?先に答えを言ってくださいな」
「……じゃあ言うぞ、彼らは桜の精だ」
「はあ!?」
思わず声が裏返ります。このお子様は何をおっしゃっているのかしら。
「推測だが、最近噂の消えた桜と言うやつだろう」
と、指を立てて見せる晴明。
「戦場にしては死体の数が少ないと思わなかったか?」
「うう、やめてくださいよ……せっかく忘れようとしているのに、思い出すとまた気持ち悪くなってくる」
吐きこそはしなかったが、未だにあの鮮明な光景が胃の辺りを苦しめているのです。
「……多分私、元の世界に戻っても御所には近づかないと思います」
この話はもう終わりとばかりに小さく手を振る私。
そういえば、私が救助活動に専念できたのも、死体の数が少なくて精神的なダメージが軽減されたのが理由でした。
「俺の使役している式神たちも霊的に死ぬと依代に戻るんだ。死体は残さない」と、晴明は傍らの勾陳を見やります。
勾陳は「おうよ」とでも言う様に頷きます。
続いて晴明は前方の曙を指さしました。
「それに、気になるなら直接聞けばどうだ?」
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