第1章

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あの事件の全貌を説明すると長くなります。 古来、我々日本人にとって桜とは切っても切れない関係である事は言うまでもなく…… 春は桜前線から始まり、ある者は桜の下で酒をくらい、ある者は『新学期』に向けての戒心の節目であると背すじを伸ばす、その有り様はまさしく、十人十色。 故に、その桜が洛中から消えているという事実はあまねく驚愕と疑問の色をもって迎え入れられていきました。 沢山の人がいれば邪推も多く飛び交う、これもまた摂理というものです。 「これは地球温暖化による異常気象であることは明らかである。近いうちにIPCCから報告がされるでしょう」 高名な環境問題研究者である、初老の男性は語り、 「いやー、これは中国の仕業でしょ、あそこは急激な発展を維持する為にも日本の良質な木材が狙いなんだっつーの。 ほら、北京オリンピックの時だってマンホールやらチェーンやら色々盗まれたでしょー!?」 それをテレビで見ていた最近の出来事は全て特亜が絡んでいると豪語する男性は飲み屋で隣のおっさんに愚痴を零す。 「これは神の怒り、ハルマゲドンの序章。そして地球は滅び、最後の審判が訪れる。 故に神である私に帰依する事、コレ終末を迎え入れる最善の策」 意見を求められた胡散臭いおっさんもビールジョッキを片手に白い長髭を振り乱し熱弁を振るったといいます。 こうしてムー並に色々な珍説が巷で囁かれ出した頃、私の耳も何処はかとなく噂をキャッチ。 ネットのまとめサイトをみながら「ふーん、そーなんだー」と、唸ったのでした。
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