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「曙さん、質問いいですか?」
「小生に何か?」
振り返る曙。
「率直に聞きます、貴方は『桜』なんですか?」
「勿論そうだが?……」
そうなんですかー。
ダーウィンの進化論がガラガラと音を立てて崩れさります。
何を今更、というふうに顔をしかめる曙。そして、何かに気づいた様に声を弾ませました。
「……もしや、あなた方は人間なのか!?」
「ふえっ!あ、そうです」
「それは良かった、今まで兵を総動員して外部との連絡網を探っていたところでね」
「何故ですか?」
そう尋ねた時、小姓が賓客の取次ぎに来たので一先ず曙と別れることにしました。
「皇女殿下がお見えになるまでいま暫くお待ちください」
小姓はメイド服を揺らし、私達を貴賓室へ通すと丁重に頭を下げ、しずしずと退室しました。
その姿を目で追いながら、晴明は嘆息しました。
「御所と言うからには純和風の寝殿造りなのかと思ったが」
荘厳な一本杉を贅沢に使った柱、梁には年輪を隠すこと無く大胆、そして主張し過ぎることなくお淑やかに使った樫。
縁には黒漆を余すことなく使い、壁一面には大理石にアラベスクを型どった金細工を一面に施し、楕円形の縁に入れられた洋画が空間に調和するように並べられていました。
「一部にロココ様式が混在していますね……」
「桜という種族は意外と宮廷技師の養育に力を入れているのかもしれないな」
その後、貴賓室を暫く物色していましたが、小姓が呼びに来たので私達は貴賓室を後にしました。
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