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紫宸殿は現実世界で復元された形ではなく、現代建築の粋をふんだんに使ったコンサートホールでした。
魔改造にもほどかあります。
天蓋をガラスで覆い、壇上には皇女殿下専用なのか豪華絢爛な椅子が一つ置いてありました。
「ほんと、何処にこんな技術があるんでしょうか……」
一先ず、やんごとなき御方の面前であるので、然るべき姿で待機。
元が紫宸殿であったことの分かる名残といえば、壇上の脇に植えられた橘と……
「私、皇女殿下の正体が何かうっすらと分かりました」
「その者、おもてをあげい」
ふと壇上から威圧的な声が響きました。
見れば桜色の髪をなびかせた二十代前半程の女性が足を組んで座っていました。
しかも、結構な美人さん。
「彼女は左ノ宮皇女殿下様だ」
傍らの曙が耳元で囁きます。
「あれ?曙さん。どうしてここに?」
「此度の活躍により小生も褒美を承ることになったらしい」
彼は至福の笑みで答えました。
「それよりも左の宮様ってことは、彼女ってやっぱり……『左近の桜』って事ですか?」
「その通りです。よくご存知で」
補足しますと、左近の桜とは日本では結構有名な桜。どの位有名かというと、「ひな祭りで桜と橘飾るでしょ。あれの元ネタだよー」って言うと大抵の人はわかる(はず)くらいです。いいえ、わかれ?
彼女は髪を巻き上げながら言います。
「さて、骸骨兵が妾達の住処を襲い始めてから久しい。幾度の戦争により知人をなくした者も多いだろう」
ホールの観客席から小さく嗚咽が聞こえました。
見ればいつの間にかホールには沢山の人達が並んで座っていました。
「……しかし、此度の戦争は勝ち戦となった。自分達について未だ分からないことも多い。が、この戦を契機とし、自らの役割を全うして欲しい」
彼女が短く締めくくると席からは堰を切ったように拍手が轟きました。私はただただ圧倒。
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