第1章

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「いや、申し訳ない。彼らも悪気が無いんだ。さっきの事は水に流してやってくれないか?」 イベントが終わったあと、曙さんがホールの出口で待っていました。 「私、人の暗黒面を垣間見たような気がしますよ」 私はお手上げのジャスチャーをしてみせます。 「何と言うか、一部では桜的選民思想、なんて言われてるのだが……」 曙さんの弁によると、「私たちが他の植物たちと違って、人間のように振る舞えるのは我々が選ばれたからに相違ない」(意訳) が桜たちの意識に酷く浸透しているんだとか。 「中でも酷い人もいてね、小生が知っている中でも鍛冶屋の垂水氏などは桜以外の植物の悪口を並べ、酔っ払った挙句「俺以外の生き物は全員死ね」と吠えていたよ」 「ははあ……確かに優越感に芽生えるのも何だか分かります」 つまるところ、この種族たちは中二病にかかっているということなのでしょう。 そして私達は木造の廊下を歩いていきました。 その時、侍女を侍らせた左の宮が通り掛かかりました。 まさに、しゃなりしゃなりという表現が似合いそうな姿でした。 「おお、これは曙と安倍晴明様」 彼女は上機嫌に、そしてごく自然に私の存在をスルー。 「はは、敬称で呼ばれるのは何かとこそばゆい」 晴明は照れくさそうに頭を掻き、ところで、と続けました。 「前々から気になっていたがこの町の防備はどうなっているのか?」
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