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「……お答えいたします。黄桜ここに」
すると、連れていた侍女たちのうちの一人が静々と前に進み出ました。
黄桜と呼ばれた彼女は一礼をすると読み物を暗唱しているかのような滑らかさで言い上げました。
「六の線に見張りの兵を2キロおきに置いています。敵を発見次第、兵舎から増援が呼び出される手はずになっています。
今回の敵が現れたのは六の線の東。山からの襲撃であり、花園の部隊は一部を除き壊滅状態になりました」
「……因みに六の線とは何だ?」
晴明が聞きなれない言葉に訝しみます。
「御所を守る防衛線です。御所を中心に若い番号から名付けて、線ごとを防衛の要に置いています」
「つまり、一の線を突破されると詰みというわけか……」
その言葉を聞いて素人ながら、この都市の防衛能力は相当に危ういのではないだろうかと危惧しました。
私たちが現れた猿が辻付近の戦いは、照らし合わせれば一の線付近。
一般的にトップクラスの警備となれば一番強い兵士に任せる筈です。そして、その警備担当は曙さんたちなのでしょう。
つまり、その間の防備は機能しなかったという事。
晴明は暫く考えると、一つの提案をしました。
「私がこの都に結界を張る……というのはどうだろうか?」
左の宮皇女は思わぬ提案に、侍女たちと顔を見合わせました。
「そうしていただけると我々としても嬉しいのですが、どうして……」
「善意から……というのではダメでしょうか?先の戦で私だけが働いてい無いというのはどうにも罪悪感が有りましてね」
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