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「……ではそれで頼む。で……何か書くものを持ってきた方がいいのだろうか?」
「あ、正式な契約書は後日、こちらから持ってきますので、今回は口頭だけで大丈夫です」
「では、くれぐれも……よろしく」
こんな時でもそっぽを向きながら呟く桜ノ宮の態度には感心しましたが、私は負けずに営業スマイルを保ちました。
その後、桜ノ宮は数人の侍女を残し、そそくさと場を離れました。誰となく自然とため息が漏れます。
彼女は、激しくはないものの、私達に主にネガティブな影響を与え、与えるだけ与えると台風のようにさっと去って行きました。
「話はまとまったようだ。では俺も久しぶりに腕を振るうとするか。さあ、誰か案内できるものはいるか?いなければ帰るまでだが」
晴明が頃合を見計らって声を上げると侍女が二人進み出ました。
「晴明様にはまず御所周りの結界を強化してもらいたいのです。それから御手数ですが、洛外にもお願いできますか?」
先ほど黄桜と呼ばれた少女は言いました。
どうやら、防衛に関してはこの少女に一任されているようです。
晴明は「少しばかり行ってくる。何、置いてくわけではないさ」と言うと行ってしまいました。
後に残されたのは、私と曙さんと名も分からぬ侍女。
「申し遅れました桔梗です」
ボブカットで控えめな色彩の着物を着た彼女はそう自己紹介しました。
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