第1章

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哲学の道ではかつて名の馳せた文人、哲学者達が思考に詰まった時に好んで散策したという。 戦後にこの美しい風景を保存しようとした時、上記のエピソードにちなんで地元民に哲学の道という名称を戴いたのでした。 今ではすっかり桜の名所として若いカップルにも人気だとか言われたりするが、例の事件のせいで数本を残しほぼ全滅。奇しくもただの小道へと戻ってしまったのです。 何故そんな道を私が歩いていたのか? 勿論、明確な理由――ええ、考え事があったのです。 「でもね、貴方が安倍晴明だとしてもですよ? なんで今更って感じなんですけど。いや、取り敢えずは信じときますよ、ね。」 「そんなこと俺にも分からぬよ、だが事実、若返った上に二度生を頂いたのだそれに……」 と、困ったように口を噤む。 「そう言えば、だ、君の名前を聞いていなかったな」 「私? 私は神代美咲」 「ふむ、ならば美咲、と気安く呼ばせてもらおう」 その後、私は例の事件、現代の風俗などを掻い摘んで話した。 「……というわけなんです」 まあ、それこそ湧いて出てきたような人間以外は誰でも知ってるんですけどね、と話の締めに小声で呟きましたが。 当然の様に晴明は興味を示したようでした。
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