第1章

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「なるほど、都と言えば花なわけだ。俺は『あはれ』とかいう貴人連中の感覚には疎いが、色がないとは何とも言い難く寂しいものよな」 そう言って晴明はしんみりとあたりを見渡しました。 いつもならピンク色に染まる空が寂しそうに緑を揺らします。 しかし、これでもマシな部類なのです。 日本にその名を馳せる吉野山はアイデンティティがアダとなりハゲ山同然の素肌をポツポツと晒してしまったといいます。 「しかし、それよりも帝が御所でなく関東の地におわすというのがどうしても気に食わん」 「何故です?」 「関東など僻地であろう?俺にそんなところへ参れと?」 晴明は忌々しいく吐き捨てました。 確かに平安時代が舞台の伊勢物語でも、主人公の在原業平が関東に赴く時に、独白で嘆きまくるシーンが有名であったりしますが、数百年の隔たりというのは大きいものなのでしょうか。 「じゃあ、とりあえず晴明さんは私の部署に来てもらえますか?」 「案内してくれるのか」 「それ以外無さそうですしね」 私は大きく嘆息しました。 「ではゆこうか」 「ゆこう」 そういう事になった。
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