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死ねばいいんじゃねえ?
それって簡単すぎね?
言いすぎなんじゃないの?
死ぬのって簡単なの?
だったらやってみせてよ?
ふう。知らなかった。
とある外国の昔。勇敢で間抜けな旅人がいました。
お供には冷静で冷血で、世の常を捨てた小太りの男。
山賊から命を救われてから、旅人に仕えていました。
旅人に名誉は無く。ただただ旅人でありました。
時代の全てがビジネスになっても義を守ろうとして、
お供は虚しい日々に、泣く事も無くただ一つだけ、
タメイキを漏らす事だけ。それだけ知っていました。
*
廃墟の写真を撮り始めて、随分色んな所へ行った。
ダム。工場。炭鉱。ホテル旅館。団地。病院。学校。
そして民家。本来は廃墟になっていても、どうあれ
誰か権利者や管理者の方々がいる、許可は必要だ。
だから私は違法に、不法侵入を行っているわけだ。
しかし辞められないんだ。そこに住んでいた誰かと、
そこで働いていた誰か。そこで学び、診察に来た人。
誰かがそこに居て何かをしていた空気を。
人が居なくなって、誰にも気付かれない建築物。
飾る事無く、自然に戻っていく隙間に魅了される。
不法侵入なので、話さない。奨めない。同時に、
現場の物は持ち帰らない。破壊したりしない。
写真や動画だけを記録する。それだけだ。
*
安全や怪我、野犬対策などして、撮影機材を持ち
深夜の日付が変わる頃に、私は一家心中があったと
噂されている、某廃屋を取材しに行った。
場所は教えられないが、町よりも少し山を登った
かなり立派だったと思われる、大きな家だった。
廃屋としては、相当に奇麗な状態であり、まるで。
まるで、昨日まで一家が団欒していて、今夜まで
一気に時間だけが経ち風化していったような。
何か懐かしい気持ちがあった。止まっている時計。
一家心中について事前調査をしたがネットでの、
都市伝説的な内容以外は、ようとしれず。
事実を問うのも怪しい。だが廃屋はこうしてある。
建物周辺は生い茂る藪で一周できなかったが、
月も明るく外からみると、この二階建ては頑丈そう。
玄関の前に立つ。扉に鍵は掛かっていない。
中へ入る。懐中電灯で様子を探る。落書きも無い
奇麗だ。まるで引っ越す為に片付けたような感じ。
ゆっくり、前に進みながら撮影をしていく。
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