第1章

2/10
前へ
/309ページ
次へ
眩しい光が窓から射し込む。 それと同時にここにいるハズのないあいつの声がする。 「おい、起きろ。朝だぞ。 ……遅刻するぞ?」 「ん~…」 なかなか目を開かないおれのベッドに座りながら、あいつが溜め息をつく。 「…もう高2なんだから、自分で起きろって言われないのか。」 う~…わかった、わかったから。 起きるから。 「カーテン閉めて…。」 眩しいんだけど。目がチカチカしちゃうじゃん。 目を少しだけ開いてみる。 「……。」 「………。」 …っだから…。 「…………………。」 だぁあ!!もう!!! 「…わかった。起きる。」 起きるから、そんな冷めた目ぇ向けるのはやめろ!!怖いだろ!! 母さんみてぇだ!! おれが渋々、ゆっくりとベッドから起き上がるのを見届けてから、あいつが。 ―…目を、柔らかく細めて、笑った。 それを見た瞬間、やられた、って思った。こいつは知っててやってるのかはわかんないけど、こいつのこの表情におれは弱い。 おれがなんか良いことしたら、ゆずは「えらいな。」って頭をなでながらこの表情をしやがる。 その瞬間、小さい子どもが親に褒められた時みたく、嬉しくてたまらなくなる。 さすがに、むやみやたらに頭なでんのはやめたらしいけど。 ――…ガキみてぇ。 …いや、ガキなんだけど!間違ってはないけど! モヤモヤと考えていたら、 「下、行かないのか?」 ってゆーからちょっとだけ、ゆずを睨みながら、さっきから思ってたことを言う。 「……行く。 けど、おれ、思ったんだけど、 おれだってお前のこと起こしてやってるよな!!?」 自分だってひとりで起きれないくせに!!
/309ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加