第1章

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     逆転のLUCK リバ 「いや。長谷川さん、俺、痔じゃないしっ」 「貴弘初めてだろ? この薬使うと気持良くほぐれるんだよ」 「なんでそんなん知ってんのっ」 「………」 「長谷川さん!? …ちょっと、勝手にぬらないでっ」 俺はキングサイズの広いベッドの上を後ずさりして逃げた。 「大丈夫だよ、俺に身を任せろ。誰も抱くとは言ってないだろ」 「そうだけど…」 コトの顛末はこうだ。 会社で受けた健康診断で俺は今までに見たことのない検査結果を見ることとなった。 『要精密検査』 検査でひっかかった俺は大腸内視鏡検査をしなくてはならなくなったのだ。 そのことを長谷川さんに告げると、若年性ポリープでも出来たんだろ。ほとんど悪性のもんじゃないから心配ないよ。と言ってくれた。 確かに自覚はないが奥のほうに出来るものは痛みがないらしいのでそうなのかもしれないなとは思った。 だがしかし、長谷川さんは俺の病気より違うところが気になったらしい。 「貴弘のアソコ、誰かに触られるんだな」 「誰かって医者でしょ? 」 「初めてなんだろ? 触られるの」 「そうだけど」 「なら、俺が先に触る」 「長谷川さん? 」 「貴弘の処女。俺が貰う。…だめか? 」 「俺を…抱くの? 」 「それは…きっと貴弘のプライドが許さないだろうから、…指で…マッサージしてやるよ」 「俺のプライドって? 」 「俺はオマエの 『彼女』 なんだろ? 」 「っ…。べ、別に女扱いしてるつもりはっ」 「いいよ。わかってる。でも俺に抱かれることは屈辱的なんだろ? 」 「そんなこと…考えも…」 そう。考えもしなかった。…でも感じては…いた。 「前に抱いてやろうかって言ったら必死に主導権取り戻してたからな。大体わかるさ」 「そんな…」 「でも。今回は俺のわがまま押し切らせてもらう」 「え? あ。ちょっと」 長谷川さんがベッドルームへと俺の手を引いてゆく。 いつもと逆のパターンに、どうしたらいいか戸惑ってしまう。 しかも長谷川さんはただの検査で触れられることに嫉妬しているのだ。 (可愛いなぁもう) 『貴弘は俺のものっ』 という心の声が聞こえてきそうな気がした。 が。 服を脱がされたまではいいが、いきなり尻に痔の薬を塗りつけようとするのには参った。いくら気が急いてるからといって、これでは甘い雰囲気もへったくれもない。
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