天使のささやき

「やあ、ナタリーか。ポーラいる？」
　ポーラはさっきから、キッチンでオーブンのパイの焼き加減を気にしている。ナタリーは電話の相手に、顔をしかめて答えた。
「今バスルームよ。しばらく出てこないと思うわ」
「そ、それじゃあ、伝えてよ。僕たちのキース先生が、先月学会で発表した論文が入賞して、テレビで授賞式をやってるんだ。ビデオに録ったから、今度見せてあげるって」
「はいはい。間違いなく伝えるわ」
ナタリーは素っ気なく電話を切った