第1章

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俺に気づくと、家元が探査装置の結果をプリントアウトしたものを渡してくれた。 「マイナスだ」 苦渋の色を浮かべ、家元が言った。 この探査装置がマイナス数値を出したのは、10年ぶりだった。俺にとっては2度と見たくはないものだった。 「負の、力……」 とうとうこのときがきてしまった。 このままずっと、なかったことにして菜月と生きていきたかったのに。 「ここに表示されたということは、やつらにも気づかれたということだ。彼女がここにいることがわかってしまったな」 家元は厳しい表情で言った。 プラスの『気』を習得してもらえれば、もしかして負の力をおいやることができるのでは、と気休めに考えていた。 しかし、こうなったからには、もう、目をそむけているわけにはいかない。 「菜月に言うよ。それで、一緒に考える。俺たちは夫婦だから」 家元は俺の肩に手をおいた。 「そうだな。菜月さんは、鷹司家の大切な嫁で、今ではかけがえのない家族だ。彼女を助けてやってくれ」 俺は家元の目を見て、大きくうなずいた。 翌朝、窓の外の激しい雨を横目に、目覚めの遅い菜月を迎えに言った。 10年前のように俺のことを忘れていたらと思うと、胸がしめつけられた。 しかし菜月は、くったくのない笑顔で駆け寄ってきた。 俺に会えてうれしい、とでもいうような、俺に勘違いをさせ喜ばせる、いつもの菜月だ。俺は鼻の奥がツンとして思わず泣きそうになってしまった。 俺のもとに帰ってきてくれた。 思わず抱きしめてしまいたくなる衝動を抑えて、食堂にくるよう言った。これから菜月に告げなければならないことは、菜月にとってあまりにもつらいことだ。
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