第一章 失踪者

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   それは街の人々では無く、酒出が考えている事である。  酒出は、【Gー3】に入店した。 「あっ、酒出のおじさん。いらっしゃいませ」 「おいおい、酒出のおじさんは無ぇだろ。マリア」 「ごめんなさい。でも、おじさんはおじさんだしなぁ」 「まぁ、仕方無ぇな」  酒出をおじさんと呼ぶ事は、大して問題では無いと彼も思っている。要は、その女性がこの店の従業員である以上、そう呼ぶ事に問題があると酒出は注意した。  ところが、それが伝わらなかった。  苦笑いを浮かべながら、マリアと呼んだ女性の前に酒出は座った。  ガールズバーとは、一般的な女性が接客する店とは違う。個々の店や、スタッフの対応により誤差はあるが、カウンターを挟んで接客する店である。  この【Gー3】は、少なくともそうである。  ともかく酒出は、カウンターを挟んで女性と対峙し。その顔を覗き込んで、下品に微笑む。
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