第一章 失踪者

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  「それで、何飲む?」 「生ビール、大ジョッキでな」 「はいよ、大ジョッキね」  酒出にマリアと呼ばれた若い女性は、自分でビールを注がず。オーナー風の中年女性に、オーダーを通した。  高嶋 真理亜 二十歳。  店では本名の真理亜を「マリア」とし、名札に記して勤務している。  派手めな外見と、カールした明るめの茶髪が水商売勤務だと主張して見える。ただ本人は、そこまで水商売の世界で、生きるつもりは無いようだ。  酒出の前に、生ビールの大ジョッキが置かれる。  それを掴んで、一気に半分以上を飲み干すと、それをきっかけに酒出は口を開く。 「それで、俺を呼び出すたぁ。お前さんの身に、何ぞ困った事でも起きたか?」 「実は、ちょっと困ってるんだ。でも、本当に困ってるのは私じゃなくて、友達の娘の方なんだけどね」 「ほぅ、友達か。お前さんにも、そんな存在が出来るようになったんだな」
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