第一章 失踪者

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  「最近になって、やっと人を信じてもいいかなって思えてきてね。あっ、おじさんの事は、あの時から信じていたよ」 「別に、俺の事なんざ信じなくていいやな」  酒出は、そう言って残った生ビールを飲み干した。  真理亜は、「カールズバーで大ジョッキは、おじさんだけだよ」と呟く。  二人の間で何があったのか、その詳細を今この場で語るつもりは無いようだ。ただ、数年前に何かしらの事件が、二人を結び付けた事は間違いなさそうである。  酒出は、バーボンのボトルを入れ、それをロックで飲めるよう注文した。  真理亜は、それもオーナー風の中年女性にオーダーする。  これが【Gー3】の形で。真理亜が仕事において、特別手抜きをしている訳では無いようだ。 「それで、その友達がどうした?」 「その娘のお父さんが、いなくなっちゃったんだって」 「いなくなった。つまり、失踪したって事だな」
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