第一章 失踪者

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   酒出は、千葉県警捜査一課の刑事である。人探しは、彼の専門外でもある。  捜査一課の仕事は、殺人や暴行など凶悪犯を相手にする部署であり。人探しは、生活安全課や地域課の仕事であろう。  本来であれば、美結の話しなど聞いたりしない。 「失踪届けを出したなら、親父さんが見付かるのを待つんだな」  冷酷であるようだが、失踪者の捜索を個々に警察官が聞き入れていたら。警察官が、一人当たりに何人担当する事になるだろうか。  事件性がないなら、そう対応するしか無いのである。  ところが今回は、少しばかり事情が違う。  話しを持ちかけてきた真理亜とは、浅はかならぬ関係がある。加えて、二人とも将来が楽しみな顔立ちをしている。  酒出は、美人に弱い。  それが未来の美人を予感させる女性ならば、未成年でもにこやかに話しを聞くだろう。  彼の名誉の為に説明するが、彼は県警一の愛妻家である。
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