第一章 失踪者

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   犯罪は、増えては欲しくない。  しかし発生した事件は、解決しなければならない。そうしたジレンマはあるものの、北方の言った事は真っ当である。  だが内海としては、そんな事が言いたいのでは無い。検挙率上昇の原因に関し、一言物申したいのである。  その原因とは、千葉県警の管理官にある。  本田 貴俊 千葉県警管理官。  酒出からは、「ケツの穴の小さい男」と称され、つい先日までその去就が危ぶまれていた男である。  だが先月、とある大事件を指揮し解決へと導いた。  実際のところ、その解決には裏がある。  本田の打ち立てた捜査方針は、ことごとく事件本筋からズレていた。とてもじゃないが、解決など望めるものでは無かった。  それを助けたのは、酒出である。  経緯はともかく、結果として事件は解決。彼の指揮が、県警内で評価される事となった。  あくまでも表向きでだが。
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