プロローグ

5/6
前へ
/912ページ
次へ
  「それが、どうだって言うんだ」 「会った事もない犯罪者を、奥の手って言ってる時点で。不確定要素が、多過ぎると言ってるんだ」 「知り合いだろうが、赤の他人だろうが。善人だろうが悪人だろうが、利用できるものは利用させてもらう」 「どんな論理だよ。説得力無いぞ」 「別に、説得するつもりなんか無い。そもそも俺たち三人とも、この計画に拒否権なんて無いんだからな」 「それにしたってさ……」 「じゃあ聞くが、お前はあの人を見捨てるつもりなのか」  背の高い男は、「あの人」と聞き身を強張らせる。  彼らの犯罪行為に至る理由は、その「あの人」を救うというもののようだ。大前提として、それがあるのだから二人の心は揺るがないのだろう。  後は、背の高い男が腹をくくるだけ。  二人は、急かす訳でも強引に決意させる訳でもなく、彼の心が固まるのを待った。  これ以上、かける言葉が無いのか。
/912ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1994人が本棚に入れています
本棚に追加