第1章 独白

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俺は生まれながらにして恵まれていたから、生きることに貪欲になったことはない。 でも、俺は日常に余裕があったからこそ、よく周りを観察する子供だった。 親父にペコペコ媚びへつらう大人たちが、陰で俺たち家族のことをぼろくそに罵っていることがあることも、比較的早い段階で知っていった。 傷付かなかったといえば、正直嘘になる。 それでも俺は、そんな人間の裏表を早くから知れて良かったと思った。 人が金であっという間に変わるのも身近で見たし、金に物言わせて真実が覆ることがあることも分かった。 小学校に上がる前の、本当にガキの頃は、そんなこと関係なく、幼なじみのカツやユウだけでなく他の子供たちとも遊んでたろうか? 今となっては そんな事覚えていない。 俺は人に絶望などしていないが、 人に希望も見いだせなくなっていった。
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