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ふと感じた人の気配に目を向けた途端に、ピタリと足は止まった。
「 ぇ、堺さんっ!? 」
そう。
驚いた事に、裏口のすぐそばの壁にもたれて立っていたのは、先ほどまで店内にいた堺さんだった。
俺の驚きようにクスクス笑いながら距離をつめてくる。
「どっどうしたんですか?」
『置いてくなんて、酷いなぁトモは。』
「え、あ、挨拶もなしに‥すいませんでした… 」
『くくっ違うよ。一緒に帰ろうと思ってたんだ。』
「 へ…? で、でもまだ途中じゃ‥ 」
『こんな日に、酒飲んでる場合じゃねぇだろ。』
穏やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと俺の手をとった。
『せっかくトモの特別になったんだ。…もっと、一緒にいたい。』
そしてまた、スルリと指を絡ませる。
もうヤバいくらい動揺して。
熱っぽい視線に、くらっとして。
心臓バクバクであわあわなる俺。
でも、さっきの言葉‥
めちゃくちゃ嬉しかった…。
“こんな日に、酒飲んでる場合じゃねぇだろ。”
それって。
堺さんも今日この日を、特別に思ってるって事だよね…?
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