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コナは昂る鼓動を抑えるように、自分自身に言い聞かせた。名前を呼ばれ、我に返ると、大歓声に向けて片手を上げてそっと応えた。
スタンバイを告げるブザーが鳴り、男たちは立ち上がった。強張る筋肉を解すように手足をぶらぶらさせながら一線に並ぶと、スターターペダルに足をかけた。白線が引かれた地に指をつき、じっと前を見る。目指す獲物は、僅か百メートル先にあった。呼吸を整えてその瞬間を待つ。辛く、苦しかった日々が、今終わろうとしていた。
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