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「……久し振り」
あいつが先に声をかけてくる。若干の躊躇いと気まずさがそこにはあった。そりゃそうだろうなと思う。私は小さく頷き、意を決してあいつを見た。代わりにあいつが目を逸らしやがった。
「……なんで目を逸らすの」
「……なんとなく?っつーか、先に逸らしてたのお前だろう」
「今は目、合わせてるんだから合わしなよ」
「…………横暴」
ぽそりと文句を言われたが聞かなかったふりをしよう。横暴なんて私が一番よく分かっている。少し間が開いて、すずが私を見た。真っ直ぐに見つめられ、思わず懐かしいと感じる。時間にすればたった数日しか顔を合わせていなかっただけだというのに。うん、殴ったときの腫れはもう無いみたいだな。暫くの沈黙が私達の間を支配する。
「……この前のことなんだけど」
それから何分か経ったかは分からない。一分か十分かそれとも三十分か気まずい沈黙は時間さえも麻痺させる。覚悟を決めて私は本題へと乗り込んだ。すずの眉がぴくりと動き、眼球が所在なさげに忙しなく動き始め、首の裏を掻き始める。見るからに緊張していることが分かる。そして、私も同じように、緊張していた。
一息つく。
そして、
「……ごめん」
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