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卒業して、進路はバラバラだけど、互いの家を行き来して、暇な日には遊んだり、そんな変わらない関係がずっと続くんだと思っていたからこそあの告白は衝撃であり、唐突すぎた。ま、唐突じゃない告白なんてこの世に存在する訳がないからあいつは悪くないとは思うけど、タイミングというものを考えろとは思った。考えた結果があれかもしれないけど、だとしたらあいつは失恋で弱っている私の心に漬け込もうとしたのだろうか。そう考えてそれはないと断言する。あいつは優しいからそんな卑怯な真似をする筈がない。あれ? 優しいからするのか?
「あーもー!わっかんないよ!」
ジタバタと両足をばたつかせてクッションに顔を埋める。ふわふわとしたそれは抱き心地が良く、荒んだ心を多少和らげる。けど混乱は増すばかりだ。本来、悩むのは性に合わないのだ。好意を向けていたときは楽しくてふわふわとして、けど切なくて痛くて、でもやっぱり楽しいの一言で片付けられるくらいには余裕があったというのに、いざ自分が恋愛感情という名の好意を向けられるとなんだかむず痒く居心地が悪い。あいつは私のどこが好きなのだろうか。そんなことを告白された日からずっと悩んでは照れてむず痒くなる。そうなると当然、あいつと遊ぶ約束とか出来る訳もなくて。
「りーん、俺の電子辞書知らね?」
バタバタ。バタバタ。揺れ動く感情を両足をばたつかせて表現しているとノックもなしに兄貴がドアを開けて入り込んできた。ベットの上で暴れている私を一瞥し、何してるのと力の抜けた声音で訊ねてくる。私は無視した。けど、身体を起こし胡座をかいてクッションを抱き締める。
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