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「………いっそ殺してくれ」
「え、なんで?」
クッションに顔を埋める。やっとチャンネルを固定したのか一定の会話内容が耳に入ってくる。このガヤガヤとした感じは多分バラエティー番組だ。うーうーと駄々っ子のように唸り、身体を左右に揺らす。好きです。好きってなんだ。気を抜けばあいつのその言葉ばっかり浮かんでは純粋な疑問が仲介に入る。例えば、あいつの言うところの好きはなんかこう憧れとか……はないかもだけど、兄弟とか親友に向ける特別なものであって、ただ単純にそれを恋愛感情と錯覚しているだけってことはないだろうか。それだといいのにと少しだけ期待する。だけど、あの日のあの言葉とあの声は紛れもなく本気だった。
「……幼馴染みぐらいがちょうどよかったのに」
友達のままでいたかったのにと本気で思う。正直の話、あいつに告白されるなんて思ってもいなかった。小学生のあれは一種の気の迷いで片付けることが出来た。だけど今は違う。私達はもう何の穢れも恋も知らない無垢な子供じゃない。大人になるのだ。だからこそ葛藤する。あいつがただのクラスメイトだったのなら、友達じゃなかったのなら、ここまで悩まなかったのだろう。ごめんなさい。それで切り捨てた筈だ。でも、あいつは幼馴染みなのだ。私の一番の理解者で、どんな我が儘を言っても無謀なことを言っても無理しても全力で私を受け止めてくれるし悪いことは悪いと否定してくれる唯一無二の存在。自分の半身のような彼と恋愛するとか、想像すら出来ない。
「だったらそーいえよ」
「あんたとは幼馴染みのままでいたいって?そんなこと言ったら、今までの関係が壊れちゃうかもしんないじゃん」
「でも、言わなきゃずっとこのままだぞ」
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