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冷静にそう指摘され唸る。それは困る。非常に困る。もしこのままあいつと疎遠になってしまった私は誰とふざけあったり相談したりすればいいのだろう。他に友達がいないって訳では決してないが、けどあいつだけは例外だった。
「人に気持ちを伝えるのも人の気持ちを断るのも応えるのも難しい。どんなに近くても他人だからそれは仕方無いわな。けどな、想ってることは何がなんでも伝えなきゃダメだと俺は思うんだよ」
兄貴が立ち上がり私の頭を一撫でする。
「相手を傷付けないようにするのは簡単だ。でも、だからといって自分の気持ちを誤魔化すことは違うと思う。大丈夫。すずはお前にフラレたくらいで傷付くような男じゃないよ」
「……それはそれでなんか、むかつく」
振られて悲しいのも辛いのも既に体験済みの私が、告白されて関係を壊したくないと答えを渋っている私が、そんな私がいうのも非常におかしな話であり勝手なことだと思うのだけど、私が振っても普通に笑っていつものように接してくるあいつを想像してなんだかムカッとするものがある。凹めよ悲しめよとは思わないけど、全然思っている訳じゃないけど、なんだか面白くはない。そんな私の頭を軽く叩いてから兄貴が我儘だと評価を落とす。自分でも知っていた。
「……俺から見れば充分両想いに見えるんだけどな」
「ん?なんかいった?」
「早く返事してやれよったんだよ」
そう言って兄貴は自分の部屋に戻っていった。
なんなんだ、あいつは。
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