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「どうしたんですか?今にも泣きそうな顔して」
「……なんでもねぇよ」
泣きそうな顔。俺そんな顔をしているのか。なんとも情けない。ふいっと顔を逸らし、また窓の外へと身体ごと向き直る。まるで道重を拒絶するような態度になってしまったが、彼女は気分を害した風もなく俺の横へと小さな身体を滑り込ませてきた。道重の体温と柔らかさと匂いがグッと近付く。
「今日の空は綺麗ですね」
「……そうだな」
「好きな人に想いを伝えるにはいい天気ですね。曇りだと決まんないし、雨だと最悪ですもん」
「……そんなもんか」
けど、道重の言うことも分かる。雨の日に告白されたいと思わないし、曇りの日もなんだかあんま決まらない。快晴の空のしたでの告白なんて想像するだけでも綺麗で、宝物のようだった。
「そんなもんですよ。実はですね、私、今年こそは想い人に告白しようと思っていたんです」
ガサゴソとブレザーのポケットから何かを取り出す道重。水色の包装紙と白のリボンでラッピングされたそれは青空を連想させる。告白しようと思っていたってことはしなかったということだろうか? 控えめな笑顔のまま見せびらかすように俺の眼前に晒したそれに疑問を覚え、首を傾げる。
「一年生の頃から彼のことが好きで、毎年バレンタインデーの日にチョコを用意していたんですがなかなか勇気が出せなくて」
「道重みたいな可愛い女の子に告白されて喜ばない男はいないと思うぞ?」
「……その人には好きな人がいるんです」
その言葉に俺は思わず口を閉ざす。
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