温めてやるから

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◇ どれだけの時間、その紙袋を眺めていたんだろう。 窓から入ってきていた陽射しはいつの間にかオレンジに変わり、そのまま真っ暗になってしまった。 今は学に会うどころか、声だって聴きたくないのに。 けれど、目の前の紙袋は、早く行くべきところに連れていってくれと言っている。 「はぁー」 小さく溜め息をついてから、重たい体を起こしてそれを手に取った。 そのまま階段を降りると、紙袋の中からふわりと漂ってきた匂いと同じものがあたしの鼻腔をくすぐる。 「はぁー」 もう一度溜め息をついてから、靴を履いてドアを開けて外へ出た。
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