第1章

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「……、来てくれるかな?」  友達の励ましもあり、彼女はとうとう行動に移した。彼は、いつもその子よりも先に登校する。だから、彼女がしたことは下校する時まで彼には気づかれない。しかし、それまでに知られてしまうのも恥ずかしかった。だから、この日を選んだのだった。  この日の授業も、帰りのホームルームも終わっている。今は、まだ部活動の時間。彼女は、彼が来るのを彼の席で、一人教室で待っていた。 「……。まだ、三十分も経ってない。長いなぁ……。」  誰もいない教室で一人待つのは、退屈で仕方ない。彼女は、正面の黒板の上に当然のように飾られている無機質な時計を見た。体感的には、一時間以上は経っているように思っていた。しかし、実際には、たったの二十分程度。彼女は、この時ほど「一秒が長い」と感じたことはないだろう。 「長いなぁ……。早く、来ないかなぁ……。」  そんなことをつぶやきながら、彼女は彼の机に突っ伏せた。そんな彼女を、初秋の太陽が優しく包み込む。彼女は、なぜかそれが心地よく感じた。  きっと、上手くいきますように……。  そう願いながら、彼女はうっかり彼の机に突っ伏したまま、夢の中へと行ってしまった。  ふと気がつくと、部活が終わる時間に近づいていた。彼女は、慌てて席から離れようとした。  と、突然、彼女の両肩を押し、再び席に座らされてしまった。 「えっ……?」  驚いた彼女は、再び座らされた状態のまま、後ろを振り返った。
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