第2章

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「じゃ、仕事に行ってくるね。就活しないなら、部屋の掃除と買い出しと、自分の洗濯だけはしといてね。」 「えぇ~?オマエのエロエロランジェリーちゃんたちはぁ?」 「馬鹿なこと言ってんじゃないの!これ以上私のことを怒らせるなら、荷物まとめて出てけ!」 「うっ、……。わ、分かったよ。いってらっしゃい。」  時は世界恐慌。某会社の株価が暴落し、そのアオリを世界中が食わされた。お蔭で、大学どころか、高校にすら通うことができなくなってしまっていた。  IT社会が崩壊してしまったのは、このためだった。  そんな時代だからこそなのだろうか?「IT」に頼らなくてもよい業種が生き残った。つまり、いわゆる「アナログ世界」へと逆行していったのだった。  そんな中でも、「専門職」は健在なうえに景気も良い。しかし、それに就くには大学を卒業しなければならなかった。その専門職に、運良く彼女はなれたのだった。 「くそっ。俺だって、本当は、アイツと一緒の職場に行けたはずだったんだ……。」  部屋に一人残された彼は、ぶつくさ言いながら朝食の片づけを始めた。運が悪いことに、彼のほうは、両親の離婚が原因で人生を狂わされた。彼女と同じ大学に在籍していたのだが、離婚と同時に学費が払えなくなってしまったのだ。  そのせいで、彼は就職どころか、バイトの採用すらもらえない状態なのだ。  そうなると、性別問わず、選ぶ道は限られる。運良く恋人がいれば、恋人を一生支えると誓えばいい。運良く親が健在ならば、親の手伝いをすればいい。  そのどちらもない場合、闇であろうが正規であろうが「からだを売る」しかない。それは字のごとく、「金持ちの道楽」に使われたり、難病患者への臓器移植に使われた。 「……。なんで、こんな時代で生きなきゃなんねぇんだよ。」  彼は、落ちかけた涙を左腕でこすり拭うと、部屋の掃除に取りかかった。
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